北海道におけるモビリティ・マネジメント推進マニュアル | |
Tモビリティ・マネジメントの基礎知識 | |
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1.コミュニケーション施策 (1)コミュニケーションの手法と具体例 |
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MMの基本となるコミュニケーション施策は、次のようないくつかの技術(手法)を適切に「組み合わせ」て実施することが一般的です。 (「⇒」の後にできるだけ噛み砕いた表現を記載し、具体例を併せて提示していますので、適宜イメージをしてもらいながら、読み進んでいただければと思います。また、巻末の「モビリティ・マネジメントの専門用語解説」を参照いただけば、より深く理解することができます。) |
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■依頼法 いわゆる「呼びかけ」のことで、こうした呼びかけを適切に行うだけで、行動変容の意図が活性化されま す。 ⇒適切な「呼びかけ」を行うことで、「やってみようかな」と思う気持ちを喚起させます。 |
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参照)モビリティ・マネジメント 国土交通省 P.3-7 | |
【具体例】;交通と環境や健康、お金などに関する情報を提供した後に(自分自身の行を振り返り、「普段の行動を見直す必要があるのかも知れない」ときづいてもらった後に)、「できる範囲であなた自身の行動を変えてみませんか」と、強制的なイメージを排除した丁重な「呼びかけ」をしている。(チラシ・A4両面) | |
▲バス事業者が配布したチラシ(帯広市) | |
■行動プラン法 行動変容をするとしたら、具体的にどの様に実行するかの「行動プラン」の策定を要請する方法です。 ⇒例えば、普段クルマで行っている最寄り駅に、「バスで行く」と仮定したときに、「何時に家を出て、ど の便に乗れば、目的の時間に着くか」というプランを立ててもらい、自分で手を動かしながらシミュレーシ ョンをしてもらう方法です。 ★これは、極めて有効な技術であることが様々な研究・取り組みによって明らかとなっています。 |
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【具体例】;バスマップと一緒に、行動プランの記入欄を設けたアンケート票を配布し、回答者に実際に記入していただく中で、プラン立案を促す。 | |
▲行動プランを用いたアンケート調査票(恵庭市) | |
■アドヴァイス法 行動変容にとって必要な情報を「アドヴァイス」という形で提供する方法です。これには、ひとり一人個 別のアドヴァイスを提供するもの(個別アドヴァイス法)と複数個人から構成される集団を対象にアドヴァ イスを提供するもの(集団アドヴァイス法)があります。 ⇒クルマの代わりにバスを利用する際に、必要となる情報(バス停の位置や時刻など)を個別(ひとり一 人)に、あるいは集団(企業や学校など)に提供し、実行に移す際の“抵抗”(=わかりにくさ)をできる限 りなくす方法です。 |
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【具体例】;ある個人に対して、自宅から最寄のバス停までの距離・徒歩時間と通勤に使えるバスの通る時間(バスに乗車する時間)についての情報を提示している。(チラシ・A4片面) | |
■フィードバック法 ひとり一人の行動や状況を測定し、それを「フィードバック」という形で提供することで、自分自身の行動 についての注意を喚起し、それを通じて行動変容の契機とするものです。これも、集団的なものと個別的 なものがあります。 ⇒アンケート調査などにより把握された人々の行動から、クルマやバスの使用時間、排出された二酸化 炭素排出量などの情報を整理し、各人にその結果を「お知らせ」します。これにより、各人が自分の行動 を客観的に見直すことができるので、一般的なことではなく、「自分のこと」として認識することができます 。そして、その認識をきっかけに、行動の自発的な変化が生じることを期待します。 |
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【具体例】;交通日記(一日の移動について、その手段や時間を記録するもの)を基に、個人が排出したCO2を算出し、その結果についてまとめたものを「お返し(フィードバック)」する。場合によっては、“ある移動(例えば通勤)に公共交通(例えばバス)を利用すれば、CO2がこれだけ減る”というような情報も併せて提供する。 | |
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▲交通日記(上:冊子版、下:web版) | ▲フィードバックの例(web版) |
(2)トラベル・フィードバック・プログラム(Travel Feedback Program:TFP) | |
モビリティ・マネジメントの代表的なコミュニケーション施策として、『トラベル・フィードバック・プログラム』(以下、TFP)と呼ばれるものが挙げられます。これは、「大規模、かつ、個別的」なコミュニケーション施策の一種であり、対象との複数回の個別的なやり取りを通じて、各人の交通行動の自発的な変容を期待するものです。 | |
FPの理解の仕方 -コミュニケーションアンケートを基本として、 -「事実情報提供法」、「依頼法」、「行動プラン法」、「アドヴァイス法」、「フィードバック法」などを、予算や -対象の規模、手持ちの情報の量・質などに応じて、 -上手く組み合わせる |
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TFPの代表的なものとして、「フルセットTFP」、「簡易TFP」、「ワンショットTFP」の3つがあります。それぞれの基本的な流れは図に示す通りとなっています。 | |
■フルセットTFP いわば「フルセット」のTFPであり、次の「簡易TFP」に「事後調査」と「フィードバック」を加えたものです 。施策としては、最も大きな効果が期待できますが、参加率が低下する傾向*にある点に注意が必要で す。 ■簡易TFP 一定の参加率と一定の効果の両方を期待できます。 最も基本となるTFPと言えます。 ■ワンショットTFP 簡易TFPから、「事前調査」を削除したもので、予算が限られている場合や、事後調査がなくても、ある 程度個別的な情報が提供できそうなときに、得策となります。 |
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* 対象となる人々との接触回数(コミュニケーションの回数)が増えるほど、人々の“負担”が大きくなり、参加率が低くなってしまいます。(施策を検討・実施するときは、この参加率をできるだけ高めるような工夫・気づかいが必要になってきます。) |
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≪詳 説≫ 各TFPをプログラム構成にそって整理すると次のようになります。 |
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各ステップの内容(調査、施策の内容)について説明します。 |
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●第1ステップ:事前調査 | |
フルセットTFPと簡易TFPのときに実施するステップです。(ワンショットTFPのときは実施しません) | |
■第1ステップ(事前調査)の目的 | |
-TFPへの参加(協力)の依頼 -参加者の個別的な基礎データの取得(ひとり一人に適切な個別的情報を提供、アドヴァイスするための データ) |
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■実際に配布するもの | |
-依頼状 -アンケート調査票 -回収用封筒 など |
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■アンケートの基本的項目 | |
-MMの効果を計測するための事前データ ・普段の自動車/公共交通の利用頻度、自動車の走行距離 ・自動車利用に対する意識、自動車の利用抑制に対する意識 -個別的な情報提供を行うためのデータ ・最寄り駅と最寄りバス停 ・普段の交通行動(目的地、移動時間帯など) |
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●第2ステップ:コミュニケーション・アンケート | |
いずれのTFPにおいても実施される、TFPにおいて最も重要なステップです。 対象者に「行動変容を働きかけるステップ」であり、TFPの中で最も重要な段階で、対象者に過度な自動車利用からの行動変容のきっかけを与える情報と、そのためにはどのようにするかを考えてもらうための情報を提供します。 |
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■第2ステップ(コミュニケーション・アンケート)の目的 | |
-対象者への、「過度な自動車利用からの行動変容」の『きっかけ』づくり | |
■手法 | |
-行動変容への『動機』を与えるための情報提供 ・自動車利用がもたらす(個人的/社会的)デメリットの分かり易い説明 -行動変容を『考えてもらう』ための情報提供・アンケート構成 ・公共交通機関等を利用するための個別的な情報やアドヴァイスの提供 ・行動プラン票を用いた具体的な行動変容についての検討 |
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●第3ステップ:事後調査 | |
TFPの効果を計測するステップです。 事後調査は、コミュニケーション・アンケート調査から、1〜2ヶ月後の時期に実施します。 |
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■第3ステップ(事後調査)の目的 | |
-TFPの効果計測 | |
■手法 | |
-コミュニケーション・アンケート調査の1〜2ヶ月後に実施 -事前調査との比較をするため、事前調査で用いた調査項目のうち、効果を計測するためのデータを基 本とする -長期効果の測定のために、事後調査から1年後に2度目の調査を実施することも望ましい |
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●第4ステップ:フィードバック | |
事前調査と事後調査を比較した結果を、参加者の方々に提供(フィードバック)します。このとき、結果を分かりやすく表現する工夫や、さらなる行動変容を促すような“しかけ”を十分に検討することが必要です。 | |
■第4ステップ(フィードバック)の目的 | |
-参加者それぞれの『行動変容』の結果をお知らせする -一層の『行動変容』を促す |
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■手法 | |
-「交通診断カルテ」を作成し、どれだけ行動が変容したのかを表現する ・自動車利用/二酸化炭素の削減の程度 -交通行動の変化に対するコメントやアドヴァイス ・自動車利用を削減できた人⇒:今後の継続的実施の呼びかけ ・自動車利用を削減できなかった人⇒:これからの動機付けになるような呼びかけ |
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(3)その他のコミュニケーション手法 | |
その他のコミュニケーション手法としては、次のものが挙げられます。 TFPやこれらの手法を組み合わせて、自発的な行動変容を促すことが重要です。 ■ニューズレター 該地域の交通問題や、交通に関する一般的な問題についてのコラムなどから構成します。過度な自動 車利用からの行動変容について基本的な事柄を意識に働きかけるものです。 ■講習会 参加できる人数が限られたものとなる傾向がありますが、ニューズレターやマスメディアよりも、より説 得的に、多面的な情報、メッセージを提供することができます。 ■ワークショップ 参加できる人数が限られたものとなる傾向がありますが、地域社会や当該組織における(社会学で言 うところの)「オピニオンリーダー」の方々の参加ができる場合は、くちコミにより情報が伝達される可能性 があり、効果(自動車の利用削減や公共交通の利用など)の量が大きくなることが期待されます。 ■マスメディア ニューズレターと同様に、新聞、ラジオ、雑誌などを通して、過度な自動車利用からの行動変容につい ての基本的な事柄を意識に働きかけるものです。 |
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