別 添
中国地方公共交通利用推進等マネジメント協議会の総括
(協議会での提案及びアンケート結果からの分析)



1.運輸部門の環境対策の現状と今後
 @ ノーマイカーデー
 中国地方は全ての県でノーマイカーデーに取り組んでおり、約6割の自治体が取り組んでいる。その内容は県主導で各市町村が同一日に実施する取り組みが主体となっているが、月に4回以上の対象日を設定し、積極的に取り組んでいる自治体もある。一方、アンケート結果からは、公共交通機関の充実度が低い市町村は自家用車中心の交通体系であるため、この取組みが実施・想定できない自治体も見られた。
 鳥取県では平成10年からこの取組みを開始し、県庁で各職員が取組み可能な日に参加するとともに、各所属で「職場ノーマイカーデー」を月1回以上設定し、「強化週間」の指定も行っている。さらに実施に当たっての支援策として、月3往復相当の公共交通機関利用料金を通勤手当として支給するとともに、運動参加者の時差出勤にも取り組んでいる。
 広島市では「ノーマイカーデーひろしま」としてこの取組みを実施し、平成20年7月よりノーマイカーデーを月3回に拡大した。具体的には、毎月2・12・22日を「マイカー乗るまぁデー」と定め、広く市民に呼びかけている。周知方法としてはポスター・チラシを掲示・配布し、道路内の広告塔や道路横断施設への横断幕等の掲示も行っている。さらに環境への貢献度が確認できるWEBサイトの開設、転入者MMも実施している。
 宇部市では県内一斉ノーマイカーデーだけでなく、市独自の取組みや強化月間を設定するなど「宇部市スマート通勤」として各種取組みと連動させ、月に4回程度の頻度で実施し、市役所職員や交通事業者・民間企業・地元住民・NPOなど地域をあげた取組みを行っている。
 このように着実にこの取組みは拡充しているが、今後は、地方自治体職員のみならず地元企業や交通事業者・地域住民とも協調した取組みとする必要がある。
 さらに、ノーマイカーデー設定日を工夫し、例えば、取組み日を増やす、特定の曜日に取り組むといった実施方法の拡充策を模索するほか、中国運輸局としても活発な広報啓発活動によりこの取組みの輪を管内全体に広げていく。  また、管内各自治体に於いても、より積極的にノーマイカーデーの普及に取り組むことが望まれる。



 A エコ通勤
 アンケート結果からはエコ通勤に取り組む自治体は3割に満たないが、鳥取県や広島市・福山市・下関市などは積極的な取組みを展開している。この取組みも公共交通機関の整備された地区でなければ取り組みは容易ではない。
 中国運輸局としては、企業に対するエコ通勤への取組みの可能性を多方面から探っているが、現状の経済情勢下では企業の利益確保が優先するため、エコ通勤を実施する企業を増加させるのは容易ではない。    一方で、個別の従業員によっては、飲酒運転や交通事故のリスクなども考慮し、エコ通勤を行うようになっているケースもある。今後も、企業に対して、より一層の普及啓発活動に努めるほか、個別に地域を限定して、その地域の住民に対しても通勤における過度なマイカー利用の抑制のメリットを説明していくこととする。
 また、管内各自治体に於いても、より積極的にエコ通勤の普及に取り組むことが望まれる。
 そのような中で、平成21年度に「エコ通勤優良事業所認証・登録制度」が創設され、中国運輸局管内では4事業所・自治体が認証されている。なかでも日東電工(株)尾道事業所は、従業員輸送を専用バスから一般路線バスに発展させ、約900人が通勤に民間バス事業者による路線バス(地元住民等も利用できる)を利用している。
 この結果「事業所内の敷地の有効活用」ができ「工場従業員の労働時間削減」にも貢献した。その他、社会貢献効果として「エコ事業所として年間1000トンのCO2削減」、「従業員の交通事故の減少」、「地域の交通渋滞の解消」等の推進にも繋がった。



 B エコドライブ
 この取組みは、アンケート結果では中国運輸局管内の自治体の実施率は約3割であり、その内容は自治体主体の啓発活動が大部分となっている。
 具体的取組みとしては広島県が職員向けの講習会を年12回開催している。倉敷市ではエコドライブ講習会を開催し、下関市ではエコドライブ教室を開催している。
 近年、環境意識の高まりとともに企業や一般住民の意識も向上し、各種主体によるエコドライブ講習会が活発に開催されるようになった。
 自治体を対象とした先のアンケートのほか、個別の情報では広島県トラック協会・岡山県トラック協会でのエコドライブ講習会定期開催や、岡山県自動車販売店協会・岡山県軽自動車協会での会員対象の講習会、サンデン交通(株)や両備HD(株)、コカ・コーラウエスト(株)をはじめとする社内講習など、交通事業者や一般企業への取組みの広がりが窺える。
 中国運輸局ではJAF((社)日本自動車連盟)と共催し、数年前から年に複数回の体験型のエコドライブ講習会を開催している。今後も一般住民を対象とした講習会を積極的に開催し、より一層の普及啓発活動に努めていく。
 また、管内各自治体に於いても、より積極的にエコドライブの普及に取り組むことが望まれる。



 C パーク&ライド
 中国運輸局管内では広島県が中心になり広島都市圏として、広島市・廿日市市・大竹市・呉市・東広島市・府中市・海田町・熊野町・坂町が「広島都市圏パーク&ライド推進協議会」を設立し、ホームページでJR各駅の対象駐車場を公表するなど、また、民間のショッピングセンター(フジグラン緑井・フレスタ沼田)を活用したパーク&ライドにも積極的に取り組んでいる。
 岡山県では岡山市が中心となり、岡山県・岡山市・赤磐市や関係行政機関や商工関係者及び交通事業者等の枠組みによる「岡山市パーク・アンド・バスライド実行委員会」を設立し大きな効果を上げている。
 他の自治体でもHP等で情報発信するなどの取組みがなされている。 パーク&ライドの取組みは公共交通利用促進や渋滞緩和の観点からも重要な取組みであり、中国運輸局ではより一層の普及啓発活動に努めていく。  また、管内各自治体に於いても、より積極的にパーク&ライドの普及に取り組むことが望まれる。



 D 時差出勤
 中国運輸局管内では広島合同庁舎勤務者の時差通勤が平成7年4月から実施されている。
 例えば、中国運輸局では実施前は全職員が8時30分出勤であったが、実施後は8時30分出勤と9時00分出勤の2つの勤務形態となった。
 鳥取県庁ではノーマイカー運動の一環として公共交通機関の運行時間に合わせる形で時差通勤を実施している。 そのほか福山市や光市で一般住民や地元企業を中心とした取組みがなされているが、取組みの大部分は自治体職員中心であり、全体の実施率は1割にも達していない。
 この取組みは、渋滞緩和に大きく寄与するため、中国運輸局は自治体や企業・地域住民の理解を深めるためにも、より一層の普及啓発活動を行っていく。 また、管内各自治体に於いても、より積極的に時差出勤の普及に取り組むことが望まれる。



 E その他取組み
 上記以外のその他取組みとしては「広報・啓発活動」、「シンポジウム・イベントの開催」、「交通実態調査」、「環境学習」、「トラベルフィードバックプログラム(TFP)(*)」がアンケートの調査対象となっているが、「広報・啓発活動」を除いては取り組んでいる自治体の割合は低い。
 「広報・啓発活動」の具体的な取組みは広報誌への掲載やホームページの開設、リーフレット等の配布などが行われている自治体がある一方、全く取り組んでいない自治体も多く、意識の向上が望まれる。
 「交通実態調査」は主に公共交通機関の利用実態調査が行われており、アンケートによるものと実測によるものがある。
 「環境学習」については実施している自治体は4割位であり、内容は交通関係の環境学習に限ったものでなく、総合的な環境学習として、小中学校や地元住民を中心に行われている。
 「シンポジウム・イベントの開催」は取り組んでいる自治体が1割程度で今後も取り組む予定のない自治体が多い。

 最後に「トラベル・フィードバック・プログラム(TFP)」は代表的な取組みとして松江・出雲地域、倉敷市水島地区、宇部市、福山市などの低炭素地域づくり面的対策事業等を利用した取り組みがあるが、全体では1割にも満たず今後も取り組みにくい内容である。
中国運輸局は各種イベント・会議等を中心に積極的に「広報・啓発活動」を実施しており、「環境学習」についても運輸支局を含め積極的に取り組んでいる。「シンポジウム・イベントの開催」についても環境関係のテーマを中心とした内容で開催している。
 中国運輸局はこれらの取組みについても、今後、より一層の普及啓発活動に取り組んでいく。
 また、管内各自治体に於いても、より積極的にこれらの取組みの普及に取り組むことが望まれる。

(*)トラベルフィードバックプログラムとは
  モビリティ・マネジメントの技術の1つで、「行動プラン法」、「フィードバック法」を組み合わ
  せ、ひとりひとりの自律的な行動変化を促すコミュニケーション型のプログラム


 

2.アンケート結果から浮かび上がったもの
 @ 都市圏での取組み
 一般的に都市圏においては、郊外・中山間地とは違い、公共交通機関網が人口規模・都市構造等により密度に差があるものの最低限の路線整備がなされている。近年、公共交通機関利用者の減少により各地で運行回数の減少や最終便の繰り上げ・路線網の再編などの状況変化が起こっている。このような中で、公共交通の利用推進・交通網の整備は環境保全の観点からも運輸行政の重要な課題である。 しかしながら、近年の予算規模の縮小から公共交通利用推進に係る各種補助金等は削減されており、運輸部門の環境対策に係る予算・補助金についても例外ではない。 現在、上記{1.の運輸部門の環境対策の現状と今後}に記した各種環境対策に対する国としての補助施策は皆無であり、税制上の優遇策も限られている。 このように、即効性・有効性の高い施策が無い中で、国の行政上の対応としては、当面、優良事例の紹介や取組みの利点の説明などを中心とした普及啓発活動を積極的に行っていく必要があるが、これとて予算の制約が掛けられている。その結果、個々の人々の意識に強く公共交通利用のメリットを印象づけるような提案など、従来以上にきめ細かな取組みを行っていく必要がある。また、国民の環境意識の向上も重要であり、地球規模の環境問題に対する早急かつ積極的な対応が更に求められる。



 A 郊外・中山間地の取組み
   郊外・中山間地においては、公共交通機関の衰退が近年急速に進んでおり、中山間地では公共交通機関が全くない自治体も多くある。 自家用自動車の利便性等から、都市圏においてもその利用率は高いが、公共交通機関の利便性の低い地域でも同様である。いわんや、公共交通機関がない場合の移動手段はおのずと自家用自動車等の利用に限られてくる。    このため、公共交通機関未整備の地区に於いては上記{1.の運輸部門の環境対策の現状と今後}に記した取組みは対応が困難なものが多い。 住民の移動手段として自家用自動車等の選択しか出来ないのであるから、公共交通機関の利用推進策を模索すること・その実効性を検討することは、現状では、行政上措置の効果・成果を求めることは意義が見いだせない。 したがって、自家用自動車等を使用するなかでも、例えば、エコドライブや、エコカーの使用、相乗りといった可能な限り環境負荷を低減するための努力が望まれる。



 今後、都市圏、郊外・中山間地を問わず、公共交通利用推進等の取組みについては、引き続き課題も存在しているところであるが、今後とも、各地域において、地域のニーズを踏まえ、地域住民やボランティア団体などとも連携しつつ、各地域と中国運輸局が知恵を出し合いながら、各地域の実情に合った課題解決及び施策展開を図っていく必要がある。