Q1.@海上をジグザグに航行するから
「クルーズ」は「海上をジグザグに航行する」という意味からきている。これは、大西洋で獲物を探す海賊船の航法に由来するらしい。転じて、ジグザグ航行をして敵を求める軍艦の航法や、客船、大型ヨットのレジャー航海もクルーズと称するようになった。したがって、クルーズ客船というのは、レジャーを目的としてた船であり、交通機関である定期航路客船とは性格を異にしている。
クルーズ客船を着想したのは、サンシャインに恵まれない北欧の人たちだった。出現したのは、19世紀後半で、気候のきびしい冬期に定期船をクルーズ船に転用し、カナリア諸島やカリブ海あたりを航海した。専用の新造クルーズ客船が登場したのは、20世紀に入ってからのことだ。
Q2.Aアメリカ
ベルリッツ社クルーズガイド2000年によると(3泊以上のクルーズを楽しんだ旅客数)、年間850万人とされているが、このうち68%の580万人は北米の人たちであり、そのほとんどはアメリカ人である。
北米でクルーズが盛んな理由は、カリブ海というクルーズに好適な海域が近くにあること、航空網が整備され、フライ&クルーズ方式の導入が容易であることなどがあげられる。
1位アメリカの5,500千人、2位イギリスの635千人、3位日本を除くアジアの800千人、4位ドイツの283千人、5位のカナダ250千人、5位イタリアの250千人、7位オーストラリアの200千人、8位日本の200千人、9位フランスの165千人、10位その他の欧州各国の120千人。
Q3.Aボイジャー・オブ・ザ・シーズ
世界最大の客船を総トン数で比較すると、1999年11月にカリブ海クルーズでデビューした「ボイジャー・オブ・ザ・シーズ」の137,278総トンがナンバーワンで、歴史的にも最大の客船となる。ノルウェー系の米国の客船会社「ロイヤル・カリビアン・インターナショナル」が5億ドルを投じてフィンランドで建造した超メガシップで、3,114人が乗船できる施設をもっている。
2位グランドプリンセスの109,000総トン、3位カーニバルデスティニーの101,353総トン。
Q4.Bマイアミ港
クルーズ客がもっとも利用する港は、やはりマイアミ港。ロイズ・クルーズ・インターナショナル誌の1999年7・8号がまとめた「トップ20クルーズ・ポート1999」で、マイアミの乗船客、下船客、トランジット客を含むトータルの利用者は2,838,082人に達している。
2位サンファンの1,682,726人、3位ポートカナベラの1,352,573人。
Q5.@セイロン号
初めて世界一周クルーズをした客船はイギリスの鉄製汽船「セイロン」(2,110総トン)である。出航地はイギリスで、出航年については、イギリスの史書では、1881年と1883年の二説がある。
日本の客船では、1973年2月14日に横浜港を出航した初代「にっぽん丸」(10,770総トン、元あるぜんちな丸)の世界一周クルーズが最初であるとされている。
Q6.B54トン
クルーズ客船の燃料は、メインエンジンにはC重油が、発電機にはA重油が用いられることが多い。
燃料油船底の燃料タンクに各港で入れられる。桟橋に給油施設がない場合には、小型の給油船が、客船の横についてホースから燃料油を補給する光景が港ではよく見られる。この燃料油の補給はバンカリングと呼ばれるが、船の石炭庫を意味するバンカーという英語からの派生語と言われ、船の燃料が石炭から石油に変わった今も用いられている。
ところで、クルーズ客船の使う燃料の量は、船の大きさと速度によって大きく異なる。85,000総トン、航海速力25.5ノットの「ディズニー・マジック」の一日の燃料消費量は約250トンで、燃料タンクには、約1,700トンの燃料が積めるから、燃料を満タンにすると約7日間走り続けることができることとなる。
本題の「ぱしふぃっくびなす」の場合は、一日の燃料消費量は54トンで、燃料タンクには約1,600トンの燃料を積めるので、一回満タンにすると30日間も走り続けることができることとなる。
Q7.「はい」
第一回芥川賞をとった石川達三の名作「蒼茫」に、こんな一文がある。「第一の銅鑼が鳴った。午後三時半である。銅鑼を聞くと室にいた移民達はどやどやとデッキに上がってきた。一本の赤いテープが誰かのてから突堤に向かってするすると伸びる。それを合図に我も我もと、無数のテープが紫に黄に縦横に乱れ飛んだ。」(新潮文庫)
日露戦争後に戦跡をクルーズした「満韓巡遊船ろせつた丸」の記録では、出航時の見送人への合図や、航海中の食事の案内に銅鑼を鳴らしているが、テープは出てこない。明治・大正期の船は沖がかりが多かったので、テープの別れは難しかったのではないか。
一説によると、1915年のサンフランシスコ万博のとき、日本人商人が売れ残った日本製の包装用テープを安く買い集め、出航の別れの握手代わりにと売り出したところ、大いに当たり、世界中に広まったという。
銅鑼の歴史はもっと古く、本来は打楽器である。かつて、中国・明末の鄭成功の水軍や瀬戸内海の村上水軍が法螺貝、鐘、太鼓を音響信号として用いたが、日本客船の出航時の銅鑼は、このなごりであるらしい。ちなみに、銅鑼は現在でも、霧中信号用として邦船に備え付けられている。
外国船の出港シーンも各社様々だが、出港を知らせる「銅鑼」が鳴らされることは、ほとんどない。また岸壁を離れる際に、陸上・岸壁の別れを惜しむといったシーンもあまりない。
Q8.「いいえ」
客船に限らないことだが、船尾の船籍地の表示を見ると、モンロビア(リベリア)とか、ナッソー(バハマ)、パナマのように、一見、海運と縁がなさそうな国の地名が標記されているのをよく見かける。日本郵船系のラグジュアリー客船「クリスタル・ハーモニー」などは、バハマ籍である。
このように、船籍を外国に置くことを「便宜置籍船」(べんぎちせきせん)と呼ばれている。便宜置籍船が激増したのは、こうした国に船籍を置くと、税金、船員の資格・労働条件などの面で便宜が得られるからである。サービス要員をはじめ多くの船員を乗せているクルーズ船では、船員費が削減できることは大きなメリットである。ところが、日本の国籍船にすると、運航要員を中心に一定数はどうしても日本人の乗組員を乗船させなければいけない、というようにその国の規制が掛かってくる。
反面、デメリットもある。ほとんどの国にカボタージュと呼ばれる規制があり、外国の船による国内輸送を認めていないこともある。
Q9.「雲行丸」
「丸」は一体、いつごろから使われるようになったのだろうか。「丸」の歴史は古く、室町時代には一般化していたことが、史料で確認されている。最古の例は、平安末期の紀伊国の住人源末利の所有船「板東丸」で「丸」が800年を超える歴史をもっていることが、これで分かる。
次に「丸」の由来だが、これについては江戸時代から関心が持たれていて、南方熊楠も「丸」について英文で書いている。とにかく、文献に基づくまっとうな説から、こじつけに近い珍妙な説までいろいろあって、とてもこの小文では説明しきれない。
愛称として「丸」を付けたとする説、船を人格視し人名を付けたとする説、朝鮮半島からの外来語説、城の本丸・二の丸といった呼称に由来するという説、これらが支持者の比較的多いものである。だが、これといった決定的な説はないようだ。
Q10.「32.31メートル」
「パナマックス」「スエズマックス」「ダンケルマックス」「アフラマックス」「レークサイズ」。これらの「愛称」は、いずれも船の大きさを表す言葉で、タンカーやコンテナ船、貨物船などの一般商船で使われている言葉だ。
最近の大型クルーズ客船の幅をみると、大部分が32.31メートル以下となっていることに気が付く。この32.31メートルという値は、太平洋と大西洋を結ぶパナマ運河で船を上下させるロック(閘門)の幅によって決まるもので、これ以上幅が広い船はパナマ運河の通過ができない。このため船幅32.31メートルの船のことをパナマックス(パナマ・マキシムの省略形)と呼んでいる。
しかし、最近建造される10万総トン型のクルーズ客船で、これ以上の幅のクルーズ船も現れており、こうした船は「オーバー・パナマックス」とか「ポスト・パナマックス」と呼ばれている。
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