当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等に関する最終とりまとめ案について 国土交通省 総合政策局バリアフリー政策課令和6年3月 目次 1.検討の経緯 2.最終取りまとめ案(概要) 3.バリアフリー環境の課題等について:各課題の優先順位と対応の方向性(案) (1)速やかに取り組む課題 @ウェブサイトにおける情報提供 Aバリアフリールートの把握のしやすさ B経路誘導に関するサインシステム等 C音声案内等の聞こえやすさ (2)周知拡大に取り組む課題 @ICTによる情報提供や誘導サービス A券売機 (3)現時点では中長期的に取り組むものと整理される課題 @運行情報 A車両内の情報提供 B輸送障害や施設不具合等の事態が発生した際の情報提供等 C改札口・改札窓口 D駅名表示 Eホームにおける乗車位置等 Fホームや移動経路における障害物、インターホン等のアクセス性 G乗り継ぎの際のバリアフリールートの整備等 1.検討の経緯(最終とりまとめ案の位置づけ) バリアフリー政策の展開 バリアフリー法制定(2006年) バリアフリー法に基づく移動円滑化基準やガイドラインを策定 国として目指すべきバリアフリー整備目標の策定 施設設置管理者等への財政支援 第1・2次バリフリ目標(〜2020) 一定規模以上の鉄道駅など旅客施設や車両のバリアフリー整備が進捗 例えば、利用者数が3千人以上の旅客施設のほぼ全てで,段差が解消されるとともに、視覚障害者誘導用ブロックの整備も進展 ・バリアフリー法改正(2018年・2020年) ・東京2020大会の開催(2021年) コロナ禍で公共交通事業者の利用者減少 移動等円滑化評価会議の設置 バリアフリー関係施設の適正利用の責務の創設 役務提供基準(ソフト基準)の創設 当事者参画の重要性の高まり 第3次バリフリ目標(2021〜) 旅客施設や車両等の更なるバリアフリー整備の推進 地方部も含めたバリアフリーの推進 外側から見えにくい障害に係るバリアフリー整備の進捗状況の見える化 心のバリアフリーの推進 等 新たなバリアフリー環境の課題に対応が必要 次期バリアフリー整備目標の策定の検討 基準・ガイドライン等の制度改正等の検討 今後の主な課題 本最終とりまとめ案では主に@Aの課題を整理 @ 当事者目線でのハード面のアクセス性や使い勝手の向上 A 情報面でのバリアフリー B 心のバリアフリーの更なる推進 C 当事者参画の推進 1.検討の経緯(中間整理提示後の検討) ? 第9回移動等円滑化評価会議(令和5年3月)において、「当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等に関する中間的な整理案」を提示。 ? 以降、最終取りまとめに向けて、以下の対応を実施。 @ 鉄道事業者に対する実態調査を実施。事業者における整備の実態や課題等を把握。 A 当事者参画の下、地域分科会にて鉄道駅施設の現地調査を実施。取組事例や課題を把握。 B テーマ別意見交換会を実施。当事者の意見を更に把握。 C 当事者及び事業者と意見交換を実施。頂いたご意見を考慮。 実態調査結果の整理・対応の方向性等の検討 事業者の整備状況や考え方等に関する実態調査の結果を整理 必要に応じて当事者からの意見の趣旨等の精査を行い、課題を整理 当事者のニーズ、対応の困難度、行政側の手当の状況(補助金、ガイドラインの有無等)等も考慮しながら、課題の優先順位や対応の方向性を検討 地域分科会の活用 4分科会において、事業者の協力も得ながら、施設の整備状況の確認や参考となる事例の収集等のため、当事者参画の原則の下、現地調査を実施 【現地調査先】 ・ 新白島駅及び県庁前駅(中国) ・ 牧志駅及び市立病院前駅(沖縄) ・ JR大阪駅うめきたエリア(近畿) ・ 大岡山駅(関東) テーマ別意見交換会の活用 当事者の意見の更なる把握が必要な項目について、認識の共有や適切な解決策の検討を図るため、テーマ別の意見交換会を実施 【テーマ】 ・ 情報アクセシビリティ ・ ホーム駅名表示の視認性 ・ 乗車位置の識別方法 ・ 経路上の障害物・インターフォンへのアクセス 当事者・事業者との意見交換会 最終取りまとめ 1.検討の経緯:鉄道事業者に対する実態調査の実施 目的 ○ 当事者目線に立ったバリアフリー環境の課題等に関する最終的な取りまとめにあたっては、移動円滑化の効果や鉄道事業者による対応の困難度等も考慮しながら、課題の優先順位や対応の方向性を検討することが必要。 ○ 上記の検討材料として、様々な規模・地域の鉄道事業者におけるバリアフリー整備状況の現状や整備の基本的な考え方等を把握するため、書面による実態調査を実施。 ○ 調査の実施にあたっては、バリアフリー整備が相当程度進んでいる鉄道駅を題材(1日あたりの平均利用者数を基準として、1社あたり3駅)とし、対象駅の選定・回答作成を依頼。 調査の概要 ○ 実施期間:令和5年8月1日〜10月20日 ○ 対象事業者:JR、民間鉄道事業者36社 ○ 主な調査内容: − 中間整理に記載されたバリアフリー環境の課題に係る、現在の基準やガイドラインの適合状況(※) − バリアフリー環境の向上に向けて工夫した事例(当事者や専門家からの意見聴取の有無を含む) − 運用・整備にあたっての課題 ※ インターネットやICTによる情報提供等については、現状詳細なガイドライン等が存在しないため、情報提供・サービス内容、運用方針、わかりにくさを解消するために工夫している点、運用の課題等について幅広く回答を依頼。 1.検討の経緯:現地視察を通した事例等の収集 中間整理を基に、施設の整備状況の確認や参考となる事例の収集等のため、移動等円滑化評価会議地域分科会のうち、下記4分科会において現地視察を実施。 実施に当たっては、様々な障害特性の方のご意見を反映できるよう留意して参加委員を決定。各委員からは、好事例として評価出来る点や、気になる点についてご指摘があった。 得られた結果については、最終とりまとめにおける各項目の記載内容に反映。 中国分科会 【視察先】 新白島駅及び県庁前駅 【施設概要】 (新白島駅)【広島県】 ・開業年月日:2015年3月14日 ・乗降人員:12,115人/日 (県庁前駅)【広島県】 ・開業年月日:1994年8月20日 ・乗降人員:12,947人/日 【実施日】 令和6年2月5日(月) (写真)新白島駅、県庁前駅 近畿分科会 【視察先】 JR大阪駅うめきたエリア 【施設概要】 (大阪駅)【大阪府】 ・開業年月日:2023年3月18日 ・乗降人数:694,156人/日 【実施日】 令和6年1月15日(月) 地図、(写真)うめきたエリア 沖縄分科会 【視察先】 牧志駅及び市立病院前駅 【施設概要】 (牧志駅)【沖縄県】 ・開業年月日:2003年8月10日 ・乗降客数:2,849人/日 (市立病院前駅)【沖縄県】 ・開業年月日:2003年8月10日 ・乗降客数:1,389人/日 【実施日】 令和5年9月4日(月) (写真)現地調査の様子 関東分科会 【視察先】 大岡山駅 【施設概要】 (大岡山駅)【東京都】 ・開業年月日:1923年3月11日 ・乗降人数:41,367人/日 【実施日】 令和5年12月1日(金) (写真)大岡山駅(駅外観)、現地調査の様子 1.検討の経緯:現地視察を通した事例等の収集A(取組事例@) 床面のサイン (写真)視覚障害者向けの誘導ナビ、床面の誘導案内、床面のサインで通行方向を分ける取組 案内表示 (写真)到着駅ホームの垂直移動設備位置の表示、ホームドアを活用した情報提供 1.検討の経緯:現地視察を通した事例等の収集A(取組事例A) 券売機・改札口 (写真)有人改札口以外の拡幅改札口、AIを活用した券売機 その他 (写真)駅係員と映像でやり取りできるインターホン、トイレの空き状況が外からわかる取組 1.検討の経緯:現地視察を通した事例等の収集B(主なご意見) インターネット ・ 駅情報について、駅の外観や改札口の写真が掲載されており、事前に駅のイメージをすることができた(知的) ・ 駅情報について、写真や構内図が掲載されているのはよかったが、拡大した際に解像度が低くなってしまう(知的) ・ HP上に掲載されているデータがPDF化されているため、読み取りソフトが対応することができない(視覚) ホーム・通路 ・ 上り・下りの音声案内が男性の声と女性の声で分かれており、判断がしやすくなっている(視覚) ・ 電車が到着した際、電車の走行音で音声案内が聞こえないことがある(視覚) ・ 行き先表示が色分けされており、分かりやすくなっている(聴覚) ・ ホームドアの点字の位置は斜面の両端が分かりやすい(視覚) ・ インターホンの位置がそもそもわからない(視覚) ・ エスカレーターやエレベーター降り口付近で、そこが何号車にあたる位置なのか音声で知らせてほしい(視覚) 券売機・改札 ・ IC専用と切符が使用できる改札をわかるようにしていただきたい(聴覚) ・ 券売機にインターホンが設置されているが、音が割れて聞きにくい(肢体) ・ 有人カウンターがある改札以外にも幅広の改札があるといい(肢体) トイレ ・ 一般トイレの手洗い場が電動車いすでも使用しやすい高さになっていた(肢体) ・ ベビーベッドではなく、大人も寝ることができるベッドだとよい(有識者) ・ バリアフリートイレの施錠ボタンについて、部屋の隅に設置されており押しにくい(肢体) ・ 家族や異性介助の場合もあるため、男女兼用のバリアフリートイレがあるとよい(肢体) ・ 2つ設置されているバリアフリートイレのレイアウトが左右対称になっていてよかった(高齢者) エレベータ・エスカレーター ・ エレベーター内にインターホンのみではなく、モニター等があるとよい(聴覚) ・ エスカレーターの入り口に上下矢印が表示されているのはとてもわかりやすい(肢体) 案内表示・その他 ・ 構内案内図がある場所においては音声案内を整備してほしい(視覚) ・ デジタルサイネージ等で表示する日本語にはフリガナをつけてほしい(知的) ・ 精算機や呼び出しボタンの位置を知らせる音声案内をつけてほしい(視覚) ・ 路線ごとに色の表示があるとわかりやすい(聴覚) ・ 案内表示が多言語(日英韓中の4か国語)表示になっていてよかった(高齢者)