20240712 移動円滑化評価会議近畿分科会意見 障害者の自立と完全参加を目指す大阪連絡会議(障大連) 鈴木千春 1 近畿分科会を年2回行ってください 本省の評価会議は年2回開催されています。近畿分科会では年1回の開催にとどまっています。そのため、当事者委員からの「意見」は各3分程度という状況であり、当事者の視点に立った課題を明らかにするには時間が十分ではありません。会議で出された課題を継続的に評価するためにも、評価会議を年2回開催してください。 〇本省の移動円滑化評価会議は委員限定で開催されていましたが、事務局等が働きかけた結果、各地方分科会委員にも傍聴ができるようになりました。各委員に重要な事項や好事例などの情報が共有できるようになった意味は大きいです。 さらには、関心のある人や一般市民にも広く視聴(WEB)できるよう働きかけをお願いします。 2 近畿分科会の取組みについて 〇関西空港のリノベーションバリアフリー検討会や万博の検討会など、「当事者参画」による会議が複数進行している状況です。しかし、いずれの会議においても、障害種別の多様性を踏まえた当事者参画にはなっていません。例えば、視覚障害の当事者委員が全盲の人1名だけである場合、弱視や色覚障害の人の課題が取りこぼされるおそれがあります。そのような課題を解決するためにも、障害種別ごとの多様性を踏まえた当事者参画を実現するようにしてください。 〇バリアフリー教室や各事業所内での障害者接遇研修等が様々に工夫されてきていることと思います。しかし、「心のバリアフリー」に関連して「思いやり」の醸成に主眼をおいた内容が少なくありません。これからは「思いやり」ではなく「社会モデル」の視点や移動の権利の重要性を理解することが必要です。研修内容の検討・実施についても障害当事者参画ですすめてください。 3 当事者委員が提案している取組みについて 〇委員提案企画(六條、鈴木):アクセス関西ネットワークとの意見交換会 2023年度においては「駅無人化」をテーマとする意見交換会を開催しました。事業者からも取組みを報告してもらい、対話を深める必要性を感じる機会となりました。今後も意見交換を重ねて、検討・検証・改善につながる場となるよう継続した開催を希望していきます。 〇「鉄道駅バリアフリー料金制度」を活かす取組みを求めます 制度届が出された鉄道事業者から毎年度の整備・微収実績が公表されています。この制度を活用するにあたり、当事者参画の検討がどのようにすすめられているのかもあわせて公表してください。 〇委員提案企画(塩安、六條、鈴木):障害種別の状況を聞き合う当事者会 障害当事者委員から他障害の課題についても知る必要があるという意見が出されました。そこから開催されることになったのが「障害種別の状況を聞きあう当事者会」です。目的に賛同した有志による任意の取組みとして、2022年度から8回開催しました。 ゆっくりとお互いの状況を交換し理解し合い、課題を整理していくというプロセスを大切にして、2024年度も年4回予定し、実施していくこととしています。 4 香りのバリアフリー関連について 香害とは、合成洗剤や柔軟剤、香水、化粧品、防虫剤、芳香剤等に含まれる合成香料に起因し、さまざまな健康被害(頭痛や吐き気、のどの痛み、動悸など多岐にわたり個人差も大きい)が誘発される現象をいいます。 また、症状が重症化すると「化学物質過敏症」を発症する人もいて、煙草の煙や殺虫剤・印刷物のインク等のあらゆる化学物質に反応するようになります。 2000年頃から香りつきの合成洗剤や柔軟剤の販売量が増え始め、2010年頃からは香りが長持ちすることを謳った商品が出回るようになりました。 本来、柔軟剤の香り成分は揮発しやすいので、すぐに消えてしまいます。その香りを長持ちさせるために開発された技術がマイクロカプセルです。マイクロカプセルが壊れることによって少しずつ香りが出てくるという仕組みで、香りを長持ちさせています。 早稲田大学創造理工学部の大河内博教授は「柔軟剤に使われているこうした技術と体調不良を訴える声との間に何か関係があるのではないかと考えています。 マイクロカプセルが壊れた時には、さらに小さい粒子が大量に放たれます。マイクロカプセルやその中に入っている粒子が肺の奥や鼻こうに入り、どんな影響を及ぼすのか、よく分かっていません。今は柔軟剤に入っている香料成分の全体像をできるだけ明らかにしようと研究を進めています」と言います。 柔軟剤などの香りで頭痛や吐き気がするという相談が消費生活センターの「消費者ホットライン188(いやや)」等に寄せられていることを踏まえ、5省庁(消費者庁、文部科学省、厚生労働省、経済産業省、環境省)連携でポスターを作成(写真1、※2)し、啓発を呼びかけています。 消費者団体である日本消費者連盟など、複数の団体が合同で作る「香害をなくす連絡会」は、柔軟剤などの香りによる健康被害の問題解決に取組みむべきなどとして、2017年より「公害110番」を実施して以降、各省庁へ要望書の提出や意見交換、院内集会などを実施しています。マイクロカプセルなどの技術が、人体に与える問題の研究の推進などを求めています。 (写真1)日本消費者連盟が作成「香害ポスター」 〇取組みの一例 ・2023年度に日本民営鉄道協会が実施した「駅と電車内のアンケート」では「迷惑と感じる行為」の選択肢に「強い香り(香水・洗剤・柔軟剤・化粧品等)」が新たに設けられ、7位にランクインしています(※3) ・「那須まちづくり広場」はフレグランスフリー宣言(※4)を表明しています。館内で働く人たちは「無香料」を実践したり、無香料専用トイレも設置されています(写真2)無香料専用トイレの掲示 〇公共交通と公共空間の事業者・管理者にしてほしいことの例 1)使用している商品の確認と合成洗剤等の見直し(例:トイレ芳香剤・手洗い洗剤、制服用の洗剤・柔軟剤、消臭剤、制汗剤等) 2)無香料化の必要性を啓発(ポスター等)、改善計画の策定 3)無香料対象の車両や空間の設定 4)当事者へのヒアリング(会議や検証時にはWEB参加も併用できるようにする) 〇私からのお願い 香害や化学物質過敏症は症状が出る人に問題があるわけではありません。「様々な健康問題を引き起こす物質」に問題があります。通勤や通学、通院や社会参加において、公共交通や公共空間の安心で安全な移動と利用ができるよう、この問題に早急に取組んでください。 ―参考― (※1)「日本消費者連盟」ホームページにポスター啓発の働きかけの経緯と課題 https://nishoren.net/new-information/16472 (※2)「厚生労働省」ホームページに「香りへの配慮に関する啓発ポスターについて(周知依頼)」 (2021年9月1日付け薬生薬審発0901第1号厚生労働省医薬・生活衛生局医薬品審査管理課長  通知) https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=00tc7829&dataType=1&pageNo=1 (※3)「日本民営鉄道協会」ホームページにアンケート回答結果 https://www.mintetsu.or.jp/activity/enquete/2023.html (※4)「那須まちづくり広場」フレグランスフリー宣言  https://nasuhiroba.com/pdf/hiroba_ffposter.pdf (参考)「STOP! 香害 香りに苦しんでいる人がいます」2021年発行/NPO法人ダイオキシン・環境ホルモン対策国民会議 https://kokumin-kaigi.org/wp-con tent/uploads/ 2021/03/%E9%A6%99%E5%AE%B3%E3%83%91%E3%83%B3%E3%83%95_web%E7%94%A8.pdf (参考)「柔軟剤 香りで体調不良の相談増加なぜ? マイクロカプセルが…」NHKのWEB特2023/8公開 https://www3.nhk.or.jp/news/html/20230801/k10014147781000.html (参考)「論争中の病(contested illness)の患者への合理的配慮―シックハウス症候群・化学物質過敏症と社会モデル」三島亜希子 障害学会第17回大会報告 2020/09/19 http://www.arsvi.com/2020/20200919ma.htm (以上)