
《日向九州運輸局長からのご挨拶》
7月1日付けで、九州運輸局長に就任した日向です。
九州運輸局では、「運輸と観光で九州の元気を創ります」をキャッチフレーズに掲げ、「持続可能な地域公共交通の実現」「運輸の安全・安心の確保」「観光による地域振興」「人材確保と生産性の向上」という4つの柱を軸に、九州の未来を見据えた取組を推進しています。それぞれの柱に沿って、抱負と方針を述べさせていただきます。
○持続可能な地域公共交通の実現にむけて
コロナ禍の収束により旅客需要は徐々に回復傾向にありま すが、バス、鉄道等の利用者数は依然としてコロナ禍以前の水準には届いていません。加えて物価高騰の影響もあり、交通事業者の経営状況は依然として厳しい状況が続いています。
また、深刻な運転者不足により、ローカル鉄道の減便や路線バスの減便・廃線といった動きも各地で顕在化しており、地域の移動手段の維持が喫緊の課題となっています。
こうした中、先月閣議決定された「地方創生2.0」においても、「交通空白」の解消等を図るため、公共ライドシェア・日本版ライドシェアの普及等、持続的に地域移動の手段が確保される体制の構築について明記されました。
国土交通本省においては、『「交通空白」の解消に向けた取組方針2025』がとりまとめられ、地方公共団体への伴走支援等、国による総合的な後押しの内容が示されたところですが、九州運輸局といたしましても「交通空白」の解消に向け、総力を挙げて取り組んでまいります。
あわせて、運転手を必要としない自動運転レベル4の早期実現に向け、技術面・財政面の支援を強化してまいります。
さらに、九州内のローカル鉄道においては、地域の関係者による今後のあり方等に関する検討が行われています。また、九州には離島航路をはじめ多様な旅客船が地域を支える社会基盤として日々運航しています。九州運輸局といたしましても、地域の方々が築いてこられた公共交通ネットワークを大切にし、自治体や交通事業者の皆様としっかりと連携し、公共交通の利便性向上、移動手段の確保及び地域活性化に努めてまいります。
○運輸の安全・安心の確保を最優先に
鉄道・自動車・海上交通など、すべての交通モードにおいて前提となる大事なことは「輸送の安全・安心」であり、これは何よりも優先される事項です。しかしながら、特にこの1年、九州管内では船舶の浸水、鉄軌道の事故・インシデント等といった輸送の安心・安全に対する不安を招く事象が相次いでいます。
このような状況を受け、九州運輸局では、技術基準、運送事業に係る許認可等といった安全規制の着実な運用に加え、法令違反に対する厳正な行政処分を伴う保安監査の実施、運輸安全マネジメント評価、さらには安全意識の向上を図る啓発活動など、多方面から様々な対策を講じています。
今後も監査・検査を一層厳格に執行するとともに、交通事業者の皆様と安全意識を共有しながら、安全文化の定着に向けた取組を継続してまいります。
○観光による地域振興の推進
九州には、豊かな自然、美味しい食、歴史ある文化など、国内外の方々を惹きつける魅力的な観光資源が数多く存在します。こうした地域の宝をより多くの方に体験していただくため、幅広く誘致に力を入れています。
特に、九州における訪日外国人観光客(インバウンド)は地理的な近さという利点から、約9割がアジアからの来訪者です。今後もその強みを生かしながら、更なる交流を進めてまいります。
また、10月に予定されています、ツール・ド・九州2025等のイベントを活用したインバウンドの受入環境整備に関する支援を行うとともに、地域の皆様と協力しながら、観光資源を活用した取組を強力に推進することで、経済的な恩恵が九州全体に持続的に広がることを目指してまいります。
○人材確保と生産性の向上に向けて
運輸・観光産業の持続的な成長のためには、人材の確保・育成が不可欠です。本年も関係行政機関等と連携し「トラックのお仕事セミナー」「めざせ!海技者セミナー」「ジュニアメカニック2025」などの啓発イベントを実施し、就職先としての運輸・観光業界への関心拡大に努めてまいります。また、各業界の雇用状況や課題に応じて、好事例を横展開するとともに、省人化・業務効率化につながる各種支援制度の活用を促し、運輸・観光分野での人材不足の解消に向けて取り組んでまいります。
○おわりに(連携の力で九州の未来へ)
ここまで申し上げました4つの柱以外にも、地域には様々な課題があります。九州運輸局は幹部職員をはじめ、運輸支局を含めた全ての職員が一丸となって、真摯にこれらの課題に向き合ってまいります。
また、私たち運輸局だけで成し得ることには限界があります。国土交通省の地方支分部局である九州地方整備局をはじめ、他の国の諸機関、さらには地方自治体・関係事業者の皆様と連携を深め、九州の持続的な発展に寄与できるよう尽力してまいります。
今後とも皆様のご理解とご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。