北海道運輸局広報誌『北斗七星』第245号(令和5年1月4日発行)
令和5年 「年頭の辞」
新年明けましておめでとうございます。令和5年の新春を迎えるにあたり、ご挨拶申し上げます。
着任してちょうど1年になりますが、この1年は状況が大きく変わった年でもありました。
ここ3年ほどの長きにわたり、新型コロナウイルス感染症により、公共交通や物流、観光事業は大きな影響を受けてきました。そのような状況にあっても、道民生活や経済活動を支えるエッセンシャルワーカーとして輸送の使命と責任を果たしてこられた関係者の方々、重要な産業である観光業を支えてくださった方々に対し、改めて敬意を表するとともに深く感謝申し上げます。
新型コロナウイルス感染症の拡大は昨年の夏を過ぎてようやく一定の落ち着きを見せ、昨年10月には水際対策をコロナ前と同等程度まで緩和するとともに、全国旅行支援により全国的な国内旅行の需要喚起を行いました。これにより観光をはじめとする人の移動、経済活動を本格的に再始動する段階に至り、運輸・交通行政に求められる役割もさらに大きくなっています。
全ての運輸・交通行政にとって、安全・安心の確保は基本的かつ最重要の課題です。しかしながら、昨年4月には北海道知床沖で観光船が遭難し、多数の死者、行方不明者を出す重大事故が発生しました。この事故によりお亡くなりになられた方々、その御家族の方々に対して心からお悔やみ申し上げるとともに、いまだに行方不明となられている方々、その御家族の方々に対して心からお見舞い申し上げます。このような悲惨な事故を二度と起こさないよう、知床遊覧船事故対策検討委員会における最終とりまとめを踏まえ、小型旅客船の安全対策を徹底的に講じてまいります。
小型旅客船に限らず、全ての交通モードにおいても安全・安心の確保に全力を挙げて取り組んでまいります。車両や船舶等に対する検査や事業者に対する監査と、安全管理を組織的に定着させるための運輸安全マネジメント評価とを「車の両輪」として実施する等により、事故等の発生を未然に防止し、国民の命と暮らしを守ることに全力を尽くしてまいります。また、「北海道運輸局安全プラン2025」において策定された飲酒運転ゼロ等の目標の達成に向け、引き続き取組みを進めてまいります。あわせて、重大事故の惹起が懸念される無車検車の排除に向け、「可搬式ナンバー自動読取装置」による昨年の街頭検査においては約1万5千台を確認し、19台の無車検車を発見したところであり、今後も取組みを継続してまいります。
事故だけでなく、自然災害への対応も重要です。昨年2月の札幌圏大雪では大規模な輸送障害が発生したことから、北海道旅客鉄道株式会社に対し、多方面からの検証を行い、改善策をとりまとめるよう指示しました。今回とりまとめた改善策を踏まえ、北海道運輸局としましても、今後同様の大雪が発生した場合の対応に遺漏なきよう努めてまいります。また、新千歳空港における滞留者解消を目的として、関係者間における情報共有体制の連携強化、新千歳空港連絡バス緊急ピストン輸送体制の構築などを行ってまいりました。このほかにも、自然災害発生時の交通情報等の新たなポータルサイトとして「北海道旅の安全情報サイト」を開設し、交通事業者や関係機関と連携して公共交通機関の運休情報等を提供しております。今後も災害発生時の対応については、代替輸送手段の確保、緊急物資輸送の手配、旅館・ホテルの協力を得ながらの要配慮者の受入等に万全を期してまいります。
アフターコロナの運輸・交通行政を考えるにあたっては、加速する少子高齢化を考慮することが重要です。人口減少局面にあって、地域の足の確保は切実な課題です。アフターコロナの公共交通の在り方について、「アフターコロナに向けた地域交通の「リ・デザイン」有識者検討会」や「鉄道事業者と地域の協働による地域モビリティの刷新に関する検討会」においてなされた提言を受け、交通政策審議会地域公共交通部会において新たな制度の具体化についての審議が行われております。このような状況を踏まえ、地域の実情に即した地域交通ネットワークの再構築に向けた検討を進めてまいります。
あわせて、地域住民や旅行者一人一人の移動ニーズに対応して複数の公共交通や移動サービス等を最適に組み合わせ検索・予約・決済等を一括で行うMaaS(Mobility as a Service)や、貨客混載についても引き続き支援してまいります。また、生産労働人口が減少していく状況下にあっても運輸・交通・観光業全般の安心・安全を担保していくためには、公共交通のデジタル化の推進や地域の様々な関係者が一体となった取組みが必要不可欠です。このため、「交通DX(デジタル・トランスフォーメーション)」、「交通GX(グリーン・トランスフォーメーション)」による経営改善支援や、官民・事業者間・他分野との「3つの共創」により経営効率化・経営力強化を図る取組み等を支援してまいります。また、地方公共団体・DMOや地域の観光事業者、先進技術を保有する企業等が一体となってデジタル技術を活用した観光地経営を図る実証事業を行ってまいります。
今後の社会全体の在り方を考えるうえでは、持続可能性は最も重要な要素の一つです。脱炭素社会の実現に向け、「ゼロカーボン北海道」タスクフォース等の関係者とも連携して、事業用自動車における電動車の導入支援や、サイクリングやカヌー等の非動力によるモデルルート造成等環境負荷の少ない観光の推進に取り組んでまいります。
観光業においても、持続可能性は重要です。地域の魅力を最大限引き出し、また地域に貢献する観光の在り方として、身体を使った活動(アクティビティ)だけでなく、野鳥の観察等「自然」に触れることや歴史や伝統、食も含めた「文化」を体験することを通じて訪れた地域の理解を深める「アドベンチャートラベル」は、その解答の一つの在り方です。今年9月に北海道で開催されるアドベンチャー・トラベル・ワールド・サミット(ATWS)においては、北海道が持つ価値・魅力を世界に発信するとともに、アドベンチャートラベルの目的地としての北海道のプレゼンスの向上に努め、今後の滞在型観光の実現に向けた大きな第一歩とすることを目指してまいります。
このほかにも課題は山積していますが、北海道運輸局として、道民・国民の皆様方のご意見を真摯に伺いながら課題の解決に向けて取り組んでまいります。本年も引き続き北海道運輸局の行政に対し、皆様方のご理解とご協力を賜りますようお願い申し上げて、年頭の辞とさせていただきます。