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北海道運輸局広報誌『北斗七星』第271号(令和7年1月6日発行)印刷用ページ

2025年1月6日 更新

令和7年 「年頭の辞」

北海道運輸局長 井上 健二

北海道運輸局長の写真

 新年明けましておめでとうございます。令和7年の新春を迎えるにあたり、謹んでご挨拶を申し上げます。「北海道を元気に」、そして「北海道から日本を元気に」との想いで、本年も全力で北海道の運輸・観光行政を推進してまいりますので、よろしくお願い申し上げます。
 
 新型コロナウイルスの5類移行から約一年半が経過し、コロナ禍からの脱却、社会経済活動の平常化に加え、北海道を訪れる旅行者の数やクルーズ船の寄港数も増加するなど、運輸・観光行政にとって明るい話題も増えてきました。昨年の日本全体での訪日外国人旅行者数は、コロナ前の令和元年を大幅に上回る過去最高の旅行者数が見込まれており、その旅行消費額も9月時点で既に年間の過去最高を上回る消費額を記録しております。北海道においても、9月時点までの訪日外客を含む延べ宿泊者数が令和元年同期比で10%超となるなど成長軌道への歩みを着実に進めています。北海道に就航する国際定期便数もコロナ前を大幅に超えており、今後、更なるインバウンド需要の取り込みを図るとともに、道内各地への周遊等を促すことで、その効果を全道に広く波及させ、地域の創生へと結びつけていくことが望まれます。こうした活動を支えている運輸・観光各セクター関係者に求められる役割は、以前にも増して大きくなっていると認識しております。
 大きな役割が期待されている運輸・観光事業だからこそ、その安全・安心の確保は、利用者に信頼される事業の根幹をなすものであり、最重要事項であります。しかしながら、昨年は鉄道輪軸組立の不正問題、函館線での貨物列車脱線事故や道内の空港連絡バスでの火災など、安全・安心に関する国民の信頼を揺るがしかねない事案が相次ぎ発生しました。事業者による安全・安心の確保が徹底されるよう、運輸安全委員会による原因究明とともに、監査の実施や緊急点検の指示などを通じて、再発防止に努めています。また、道内では、令和5年11月に発生した不正改造軽自動車のタイヤ脱落事故後も、事業用大型自動車のタイヤ脱落事故が多発していることから、北海道警察をはじめ関係機関と連携し、不正改造車両の排除やタイヤ脱落事故防止に向けた合同啓発活動などの取組を強化しております。特に、大型自動車については、タイヤ脱落事故を発生させた運送事業者又は整備管理者に対し、令和5年10月より行政処分が導入されており、厳正に対処しております。
 また、知床遊覧船事故を教訓として、このような痛ましい事故が二度と起きることがないよう、北海道運輸局では、事故発生の日を「輸送安全を誓う日」と定め、全職員が「安全・安心の運輸・観光行政」の重要性を再認識するための研修等の実施に加え、全ての輸送モードでの事故防止・安全確保に関する様々な取組を進めることとしています。各輸送等事業者の皆様におかれましても、経営トップから現場まで一丸となって、日々の業務や事業の運営に当たり安全を最優先に取り組んで頂いていることと思いますが、改めて、輸送等の安全・安心の確保に万全を期していただきますよう、この場をお借りしてお願い申し上げます。
  
 地域における住民・観光客の移動手段の確保も現下の運輸・交通行政の喫緊の課題です。人口減少の進行やコロナ禍で生じた行動変容により、公共交通を取り巻く環境は厳しさを増し、地方部ではバス路線の廃止・縮小やタクシー事業者の廃止などにより、通院や買い物のための移動需要に対し交通サービスが供給できないといった交通空白が各地で発生しています。一方、都市部では、経済活動の平常化に伴い、交通需要の急回復にドライバーの確保が追いつかず、深夜の時間帯などで、時間的な交通空白が発生する事態もみられました。このため、国土交通省においては、タクシー事業者の管理の下、タクシーの不足する地域・時期・時間帯において、地域の自家用車や一般ドライバーも活用し、地域交通の「担い手」や「移動の足」の不足といった社会問題への対応を進めるため、昨年3月に自家用車活用事業(日本版ライドシェア)の制度を創設したところです。その後も、悪天候(雨天・酷暑)・大規模イベント等への対応、台数制限の緩和など、需要に合わせて順次制度のバージョンアップを行ってまいりました。「交通空白」の解消に向けた取組を強力に推進するため、国土交通大臣を本部長とする「交通空白解消本部」も昨年7月に設置され、北海道においても運輸局・支局が総力を挙げて、空白解消に向けた地域への働きかけや後押しを進めております。道内自治体の首長訪問、地域公共交通の現況・課題等の聞き取りなどを踏まえ、地域の実情に応じた解決策の議論・提案や対応策導入の支援などを進めております。加えて、自治体とタクシー事業者の連携・調整が円滑に進むよう、北海道ハイヤー協会の協力の下、自治体と事業者の橋渡しを行っております。そのような中、道内では、郵便局と連携し、自家用有償旅客運送(公共ライドシェア)の制度を活用した貨客混載の実証事業を全国で初めて実施するなど、先進的な取組も見られます。令和7年度から令和9年度の3か年を「交通空白解消・集中対策期間」とし、今後も、スピード感を持って地域の取組を強力に後押し、空白の解消につなげてまいります。
 
 いわゆる「2024年問題」への対応も、運輸行政の喫緊の課題の1つです。昨年4月からトラックドライバーに「働き方改革関連法」が適用され、トラックドライバーの労働時間が短くなることから、輸送力不足による物流の停滞が懸念されています。このため、一昨年10月に取りまとめられた物流革新緊急パッケージ等に基づき、物流の効率化、荷主・消費者の行動変容、商慣行の見直しに向けた取組を進めています。特に、物流の効率化については、物流事業者、荷主企業・消費者、経済社会が「三方良し」となる社会の実現に向けて、昨年4月に成立した改正物流法に基づく諸施策の着実な推進に努めてまいります。荷主・消費者の行動変容については、消費者が荷物の受取方法(置き配など)やゆとりのある配送日時を自ら「選択」できる仕組みを構築し、物流負荷軽減に協力的な消費者にインセンティブを付与する実証事業などを通じて、再配達率の半減を目指します。商慣行の見直しに向けては、昨年11月に「トラックGメン」が「トラック・物流Gメン」に改組され、トラック事業者に対し違反原因行為をしている疑いのある荷主等についての情報を、倉庫業者からも積極的に情報収集を行うこととしました。北海道運輸局の「トラック・物流Gメン」を20名体制へと拡充するとともに、北海道トラック協会によってGメン調査員21名が新たに選任されるなど、体制強化も図られております。特に、Gメン調査員は、適正化事業指導員から選任されており、地域の事業者の実情や荷主との関係などについても精通しており、その知見を活かし、巡回指導などを通じて得た情報を定期的に「トラック・物流Gメン」と共有することで、トラック運送事業における適正な取引を阻害する疑いのある荷主・元請事業者の監視強化に資することが期待されています。「トラック・物流Gメン」とGメン調査員が緊密に連携し、トラック事業者への実効性の高い情報収集や荷主・元請事業者等の物流拠点へのパトロールを実施し、悪質な荷主・元請事業者に対する「要請」「働きかけ」などを強力かつ果敢に実施してまいります。また、積載率の向上に資する物流事業者間のマッチングイベント「ロジスク」(ロジスティクス+スクラム)も関係機関等と連携して実施してまいります。
 
 運転者等の担い手不足問題への対応も喫緊の課題です。運輸・観光各セクターの足下の状況を見てみますと、バスやタクシー等の運転者不足をはじめ、空港やホテル・旅館など観光事業を支える担い手不足による影響が深刻化しており、バス路線の縮小・廃止や移動需要に対し交通サービスの供給が追いつかない時間的な交通空白、チャーター便等に対応した貸切バス確保の困難化、ホテル等施設における稼働抑制や食事サービスの提供中止といった事態も発生しています。交通・観光需要の拡大の追い風をしっかりと取り込み、持続的で力強い成長へと結びつけていくためにも、これらセクターを支える担い手の確保は急務です。北海道運輸局では、即戦力となる人材の確保の観点から、大型車免許保有率の高い退職予定の自衛官向けバス・トラック等運転体験・就職説明会の開催や、道外からの担い手確保に向けた北海道への移住・定住イベントでの移住に伴う求職者への就業の働きかけを通じて、運輸・観光セクターの担い手の確保の後押しを進めております。同セクターでの女性の一層の活躍も重要です。そのため、交通分野等で国際的な潮流となっている「ジェンダー主流化*」の道内での普及・浸透に努めてまいります。また、昨年10月には道内初の、運転者を必要としないレベル4での自動運転車の実証運行が実現するなど、運転手不足の解決に向けた先進的な取組も道内各地で進められており、こうした自動運転の実証事業をはじめ、省人化・効率化等に資するDX化・GX化等の取組を引き続き支援してまいります。加えて、「ゼロカーボン北海道」の実現に向けて、関係機関等とも連携し、事業用自動車の電動化や物流施設での再生可能エネルギーの活用に必要な設備等の導入など「交通GX」を推進してまいります。
 
*「ジェンダー主流化」とは、社会的・文化的な性差(ジェンダー)の平等実現を目的として、男女で異なる課題やニーズを踏まえて、あらゆる政策や事業などを立案・実行していくことを指します。
 
 次に、北海道の基幹産業である観光についてですが、持続可能な観光の推進と併せて、地産地消、農水産品の輸出促進など「観光と食の好循環」や旅行者の移動需要の公共交通への取込みなど、観光の持つ「力」を最大限地域創生に生かすことが重要と考えています。「アドベンチャートラベル」は、地域の豊かな自然や独自の文化など北海道の「強み」を生かすことができる持続可能な観光形態で、旅行消費額も通常の旅行の約2倍と経済効果も高く、今後の北海道観光の大きな柱の一つになるものと期待されます。その目的地として「国立公園」は海外の旅行者からの人気を集めており、昨年6月に指定を受けた「日高山脈襟裳十勝国立公園」をはじめ道内7つの国立公園の大自然の魅力も活かしながら、引き続き、プロガイドの育成と併せて、魅力あるコンテンツの磨き上げや積極的な誘客を通じて、アジアのアドベンチャートラベルをリードする先進地域として確固たる地位を築くとともに、観光消費の拡大を通じた地域の活性化につなげてまいります。同時に、北海道観光の高付加価値化や富裕層の取り込み強化も重要です。新千歳空港ではビジネスジェット専用ターミナルが整備され、ビジネスジェットを活用した旅行や道内空港を拠点にヘリコプターで周遊する旅行の商品化の動きも見られ、来年春にはJR北海道による豪華観光列車の運行開始も予定されるなど、高付加価値旅行者層をターゲットに高品質な移動体験を提供する取組が進んでいます。こうした動きを後押しするため、道内の観光地・観光産業の再生・高付加価値化を強力に進めてまいります。また、観光客の満足度向上の観点から、局所的に発生している渋滞や混雑の防止・抑制に向けた取組も強化しております。冬季のニセコ地域でのタクシー不足に対し営業区域外からタクシー車両・乗務員を派遣する「ニセコモデル」については、昨シーズンの実績・経験を踏まえ、今シーズンは車両・乗務員体制をさらに拡充・強化するほか、美瑛町エリアにおける交通渋滞や函館山山頂における夜景時間帯の混雑の緩和に向けた取組を支援しており、引き続き課題解決に向け、地域と連携し適切かつ果敢に対応してまいります。さらに、地元経済界を中心に検討が進められている、全道的な交通と観光の共創を目指した「北海道MaaS(マース:Mobility as a Service)*」の実現を後押しし、旅行者の利便性向上と移動需要の地域交通への取り込みを進めてまいります。また、航空燃料の供給不足が外国エアラインの新規就航等インバウンド需要拡大の足かせとなることのないよう、引き続き状況を注視し、官民連携して適切に対応してまいります。
 
*「MaaS(マース:Mobility as a Service)」とは、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービスであり、観光や医療等の目的地における交通以外のサービス等との連携により、移動の利便性向上や地域の課題解決にも資する重要な手段となるものです。
 
 このほかにも課題は山積していますが、北海道運輸局として、道民をはじめ利用者や業界関係者の皆様のご意見を真摯に伺いながら、職員一丸となって、安全・安心の運輸・観光行政の徹底と各種施策の推進を通じて、北海道の更なる発展に貢献してまいります。
 結びに、皆様にとりまして希望に満ちた素晴らしい一年となりますことをお祈り申し上げ、年頭の辞とさせていただきます。
 

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