交通政策部長 傳 勝博
令和7年 年頭の辞
皆様方には、平素から九州運輸局の交通政策の円滑な推進に格別のご理解とご協力を賜り、厚くお礼を申し上げます。
交通・物流は国民生活の安定と経済の健全な発展を支える重要な社会基盤であり、我が国が直面する社会・経済の大きな変化に的確に対応することが期待されています。
他方で、地域交通については、コロナ禍の収束に伴い旅客需要は回復しているものの、依然としてコロナ禍前の水準に至っておらず、また物価高騰の影響もあり、交通事業者の経営状況は依然厳しい状況が続いております。加えて、運転者不足によるバスや鉄道の減便、廃線等の動きが各地で顕在化しています。
そのため、国土交通省では、多様な関係者の連携・協働による取組を通じて地域交通の利便性・生産性・持続可能性を高める「地域交通のリ・デザイン」を推進しています。また、地域住民や観光客がタクシー等の移動手段を利用できない「交通空白」の解消に向け、総力を挙げて一気呵成に取組を進めています。九州運輸局としましても、地域に寄り添って築いてきたネットワークを最大限に活かし、自治体や交通事業者の皆様と連携しながら、地域の移動手段の確保、地域交通のリ・デザインの推進に向けて取り組んでまいります。
さらに、九州では、昨年8月に開始された九州全域を対象としたMaaSサービス「九州MaaS」など、多様な関係者との連携・協働による様々な取組が進められています。このような九州の地域交通を支える重要な取組に積極的に支援してまいります。
また、交通環境対策では、2050年のカーボンニュートラル実現のため、GX等の推進に取り組んでいます。グリーン社会の実現に向けて戦略的に取り組む重点プロジェクトがとりまとめられた「国土交通グリーンチャレンジ」に基づき、次世代自動車への転換、デジタル技術を活用したスマート交通やグリーン物流、グリーン経営の推進等の取組を分野横断・官民連携して「交通・物流のGX」を進めてまいります。
次に、物流については、昨年4月から、物流産業を魅力ある職場とするため、トラックドライバーに時間外労働の上限規制が適用となりました。その一方で、物流の2024年問題のもとでは、物流の停滞が懸念されることから、サプライチェーン全般にわたって最適化し、生産性を向上させることが必要不可欠となっております。その実現に向け、物流DXや物流標準化、九州の地域特性を踏まえたモーダルシフトの推進等の取組をさらに進めてまいります。
また、災害に強い物流システムの構築に向けて、最近の台風・豪雨災害等の教訓を踏まえ、大規模災害の発生に備え、九州各県や事業者団体等と連携し、緊急支援物資の円滑な輸送体制の確保に取り組んでまいります。
さらに、将来の交通・物流事業者における担い手の確保も重要であり、九州運輸局では様々な取組を推進しています。昨年には、自衛隊地方協力本部・業界団体と連携し「退職予定自衛官向け運輸業合同説明・運転体験会」を開催し、運輸業界の紹介等を行いました。このほか、九州管内の大学・物流事業者との連携による「物流講座」を実施しており、本年も引き続き、担い手確保のための取組を推進してまいります。
交通分野におけるバリアフリー施策については、「真の共生社会の実現」に向け、各公共交通事業者と連携しながら、引き続きバリアフリー整備目標に基づき、旅客施設や車両等のバリアフリー化や、面的なバリアフリーのまちづくり、心のバリアフリーの認知度向上に向けた取組を推進してまいります。
また、昨年4月から、障害者差別解消法の改正により、事業者による合理的配慮の提供が義務化されましたが、障害を理由とする差別の解消のための取組は、事前改善措置としての環境の整備と合理的配慮の提供を両輪として進めることが重要です。ハード面におけるバリアフリー化、職員に対する研修等のソフト面の対応等の環境の整備に係る施策を着実に進めてまいります。さらには、「バリアフリー教室」の開催を通じ、「心のバリアフリー」の意識醸成や理解向上に取り組んでまいります。
結びになりますが、本年の皆様方のご健勝とご多幸を祈念申し上げますとともに、変わらぬご支援・ご協力を賜りますことをお願い申し上げ、新年の挨拶といたします。