前例なき特例措置で事業者を救え!コロナ禍の危機に挑んだ軌跡

O.J
総務部人事課 人事第一係長
2010年4月入局

業務経歴

【係員】

(本局)自動車監査指導部

(本局)総務部人事課

【係長】

(支局)輸送部門 貨物担当(兵庫陸運部)

(支局)輸送部門 タクシー担当(大阪運輸支局)

(本局)自動車交通部旅客第二課

(本局)観光部国際観光課

(本局)総務部人事課

まずは入局年次とこれまでの経歴、現在の業務を教えてください。

2010年(平成22年)に入局し、今年で丸16年を迎えます。現在は人事課に所属しており、採用担当の係長として、組織の未来を担う新しい仲間づくりに向けた業務に幅広く携わっています。当機関は陸・海の交通ネットワークにわたる非常に広大な行政フィールドを持っており、私自身も入局以来、多種多様な部署を経験してキャリアを積んできました。

その中でも特に私の公務員人生において印象深く、大きな転機となったのが、自動車交通部の「旅客第二課」に在籍していた時期に直面したプロジェクトです。時期としては平成31年(令和元年)から令和3・4年にかけての数年間で、まさに新型コロナウイルスが世界中で猛威を振るい始めたタイミングでした。

当時の私は、タクシー事業に関する各種の許認可や指導などを担当する係長を務めており、部内には30〜40名、課内だけでも十数名いる組織の中で、かつて経験したことのないような業界の危機と正面から向き合うことになりました。旅客第二課というのは、地域の皆さんの移動手段であるタクシーの事業計画や認可を行う部署です。普段は法律に基づいた厳格な手続きが求められる部門ですが、そこに未知のウイルスが直撃し、日々の業務内容がガラリと変わるような事態に発展していきました。

旅客第二課では、当初どのようなミッションを担っていたのでしょうか。

私が旅客第二課に着任した当初の日本は、インバウンド需要が右肩上がりで増加し、外国人観光客が急増している非常に活気のある時代でした。そのため、タクシー(ハイヤー)業界も事業拡大のフェーズにあり、日本国内の企業にとどまらず、外資系企業などからも「新たにタクシー(ハイヤー)事業へ参入したい」という申請が相次いでいました。私たちはそうした新規参入や事業の区域拡大等の許認可業務に追われており、いわば業界の「アクセル」を踏むための手続きをサポートするのが主なミッションでした。法令に則り、外国語の翻訳ツールを駆使したヒアリング・書類も含めて慎重に審査を行うなど、業界の活性化に向けた業務が中心だったのです。

しかし、コロナ禍に突入したことで状況は180度、劇的に変わりました。緊急事態宣言などで街から人の姿が消え、インバウンドどころか日常の移動すら激減したことで、既存の国内タクシー会社は一転して深刻な経営危機に直面したのです。新規参入を促す業務は完全にストップし、今度は「今ある国内のタクシー事業者をどうやって手助けし、倒産から守るか」という、業界の存続をかけた「支援・救済」の業務へと、ミッションを大転換させなければなりませんでした。業界の活性化に急ブレーキがかかり、そして、支援・救済の役割へと、これほどまでに業務の目的が急変する経験は初めてのことでした。

コロナ禍での支援において、具体的にどのような壁にぶつかったのですか。

タクシー需要がほぼ消滅してしまったため、事業者は車を動かせば動かすほど赤字になる状況でした。少しでもコスト(自賠責保険や維持費など)を抑えて事業者を存続させるため、特例措置としてタクシーの「営業用ナンバー(緑ナンバー)」を一時的に外し、「休車」扱いにする異例の対応をとることになりました。通常、タクシーの営業用ナンバーを外すことは「減車」となり、事業計画の変更にあたります。そのため、事態が落ち着いたからといってすぐに元の台数に戻すことは近畿のほとんどの地域で法令等によりできません。しかし今回は緊急事態による特例として、「後で必ず元に戻せる権利を残したまま、一時的にナンバーを外すことを認める」という前例のないルールが適用されたのです。

ここで私たちがぶつかった最大の壁は、その「膨大な車両の管理方法」でした。私たちの管内だけでも数百のタクシー会社があり、稼働している車両は何万台という規模にのぼります。「いつ、どの会社の、どの車のナンバーを外し、いつ元に戻すのか」を正確に記録・把握しておかなければ、コロナ禍が収束して事業を再開する際に大混乱を引き起こしてしまいます。法令等の枠外の特例であるがゆえに、既存のシステムでは対応できず、この数万台規模の動きをどうやってミスなくコントロールするかが、非常に重い課題として立ち塞がりました。

数万台規模の車両管理という難題に対し、どのようにアプローチしましたか。

当初は、管内の支局に対して管理用のエクセルファイルを配布し、現場ごとにナンバー着脱の入力や進捗管理をしてもらっていました。しかし、この特例措置自体が全くのイレギュラーであったため、現場の担当者によってルールの解釈にズレが生じてしまいました。「この書類で受け付けていいのか」「この場合はどう処理するのか」といった混乱が現場で起き、場合によっては事業者の申請を誤って突き返してしまいそうになるケースも発生したのです。

そこで私は思い切って方針を大きく転換し、一度各支局での分散管理をやめ、「私のもとに情報を一元化する」という決断を下しました。具体的には、支局には窓口で受け取った紙の届出書をPDF化して送ってもらうだけのシンプルな作業にとどめ、集まってきた膨大なデータを私が自席のパソコンで一つひとつエクセルに入力し、全体の状況を管理する仕組みに変えたのです。 同時に、本省(東京)からは新しい指示や特例の運用方針が通達されてきていたため、それらを噛み砕いてマニュアルやFAQを作成し、各支局へ素早く共有しました。現場の混乱を最小限に抑えつつ、トップダウンの指示を正確に反映させるためのハブ(結節点)として、関係各所との調整に奔走する日々でした。

このプロジェクトを通じて、ご自身の中でどのような学びや成長がありましたか。

これまで経験したことのない異常事態の中では、既存のルールや過去の慣例に縛られず、いかに「スピーディーかつ柔軟に物事を進めるか」が重要であるかを深く学びました。平時であれば、時間をかけて完璧なシステムを作り上げるところですが、危機的状況下では「今、目の前で苦しんでいる事業者をどう救うか」が最優先されます。そのために、泥臭くても確実な方法(PDFを集約してエクセルで一括管理するなど)を選択し、素早く実行に移す決断力が身についたと感じています。また、巨大な組織における「情報のハブ」の役割がいかに重要であるかも痛感しました。

本省が描く大きな方針と、現場(支局)が直面している実務的な混乱、そして事業者の切実なSOS。これら全てを俯瞰し、情報が行き違わないようにコミュニケーションのパイプ役を担った経験は、私自身の大きな自信となりました。一人で抱え込まずに周囲を巻き込み、意思統一を図りながら前例のないプロジェクトを完遂できたことは、現在の採用担当としての業務や、今後どのような予期せぬトラブルが起きても冷静に対処できる「揺るぎない土台」になっています。この数年間は非常に濃密で、行政のあり方や事業者との向き合い方を根底から見つめ直す貴重な成長の機会でした。

当時の職場の雰囲気や、困難を乗り越えられた要因は何だったと感じますか。

あのような未曾有の危機的状況下にもかかわらず、職場の雰囲気は常に温かく、強固なサポート体制があったことが最大の要因だと感じています。当時、私は現場のまとめ役である「係長」という立場でしたが、決して孤軍奮闘していたわけではありません。自分の直属の部下である係員がしっかりと実務をサポートしてくれたのはもちろん、上には課長や専門官といった経験豊富な上司や先輩方が控えており、自分で判断に迷うような難しい案件があれば、いつでもすぐに相談できる環境がありました。

当機関の大きな魅力の一つは、まさにこうした「風通しの良さ」と「人を大切にする温かい人間関係」にあります。役職や年次に関わらず、フラットに意見を言い合ったり、困っている人がいれば部署の垣根を越えて助け合ったりするカルチャーが根付いています。実際、私が「支局での管理をやめて一元管理したい」と提案した際も、頭ごなしに否定されることなく、より良い方法を一緒に模索してくれました。プレッシャーの大きな日々でしたが、この組織特有の「失敗を恐れずに挑戦させてくれる土壌」と「チームで困難を乗り越えようとする一体感」があったからこそ、あの大規模な特例措置の運用を最後までやり遂げることができたのだと確信しています。

最後に、採用サイトを見ている求職者の方へメッセージをお願いします。

現在私は人事課で採用担当をしておりますが、就職説明会などの場では、今回お話ししたような「コロナ禍での危機対応」の経験談を直接学生の皆さんにお伝えするようにしています。それは、当機関の仕事が単なるルーティンワークではなく、「社会のインフラを根底から支え、いざという時には人々の生活や事業者の命運を左右する、非常にダイナミックで責任ある仕事だ」というリアルな姿を知っていただきたいからです。私たちは陸・海と非常に幅広いフィールドを管轄しており、キャリアを通じて多様な業界と関わり、社会貢献を肌で感じることができます。

もちろん、想定外の事態に直面して大きな壁にぶつかることもありますが、それを乗り越えた時の達成感は何物にも代えがたいものがあります。そして何より、そうした困難な局面に立たされた時に、必ず手を差し伸べてくれる頼もしく温かい仲間がここにはたくさんいます。

公共交通の未来を守り、より良い社会の基盤を作っていくという使命感に共感し、予期せぬ変化にも前向きに挑戦していきたいという熱い情熱を持った方からのご応募を、心よりお待ちしております。ぜひ私たちと一緒に、日本の公共交通を支え、発展させる仕事をしましょう。

Contact

お問い合わせ

事務職 | 総務部人事課

06-6949-6405

技術職(自動車・鉄道) | 自動車技術安全部技術課

06-6949-6452

技術職(船舶) | 海上安全環境部船舶安全環境課

06-6949-6426

フォームからお問い合わせ

お問い合わせはこちら